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馬と鹿の咄

第16章 おじいさんのお客さん

【おじいさんのお客さん】


 2年ほど前、たしか1月だったかな?


 お客さんの話なんですがね。


 うちの理容店に、朝、おじいさんが散髪に来たんです。


 そのじいさんが、終わるか終わらないかくらいに、別のじいさんが来て待合で順番待ちしてはったんです。


 ちなみに、先にしてたじいさんを、Aじいさんとしましょう。


 後から来て、待ってる方をBじいさんね。


 AじいさんはBじいさんに気が付いて「おぉ、久しぶりですなぁ」と声をかけた。


 Bじいさんは「おおAさんやないの。おめでとうさん」


 Aじいさんが、終わって待ち合いに座り、Bじいさんが、カットをはじめる。


 二人で新年の挨拶をすませたら、近所の別のおじいさんの話をしだした。


A「○○の××さん、あれもう92歳やってなぁ」


B「ほんまや、元気やであれ」


A「そやけど、だいぶボケとるで。5分前に会ってるわしの顔みて、えらいご無沙汰やなぁ言うとるしなぁ」


B「そうやねん、あれ、家から出て来てすぐさま、自分の家の場所忘れてんやからなぁ。目の前が家やがな」


 そんな話をしていた矢先にAじいさんが僕に「すんません、わたし順番まだでっか?」て、あんたもう終わったよっ!!


 あんたがボケとるやないかっ!!




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