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恋と秘密と幼なじみ

第8章 夏の足音

「いつもひめちゃんがお世話になってます」

祥吾は笑いながら頭を軽く下げる。
しかし目許は笑っておらず、静かな闘争心を剥き出しにしていた。

それに気圧されたのか、鬼澤はスッと視線を逸らす。

「じゃ、じゃーねー!」

慌てて陽姫はみんなに別れを告げると立ち去った。

「もうっ! 祥吾君怖いからっ!」

人混みに紛れ、だいぶ離れてから祥吾に怒る。

「なにが?」
「鬼澤君に敵意剥き出しにしてたくせに!」
「そう?」

惚けて笑うその顔はいつも通りの優しい幼なじみの顔だった。

「バレたらどーすんのっ!」

ぱちんと腕を叩いたが、本当は少し嬉しかった。

「歩き疲れちゃったし、帰ろうか?」

二人きりになりたくてそう告げると「そうだな」と祥吾も返してくれる。

本当は疲れていない二人は少し急ぎ足で帰りの途についた。

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