『甘い蜜』
第26章 甘い蜜 26
「…ここか。」
放課後、先生に生徒会長の家を聞いた俺は行ってみる事にした。
ずっともやもやとしたこの胸の感情を早く消したくて…
この感情が何なのかを知りたくて。
「神埼…?」
声がした方を振り返れば…
「…なんだ、元気なんじゃん。」
生徒会長と…、その横に後輩なのだろう少年がピッタリと寄り添うように立っていた。
やっぱり俺が来る必要なんて無かった…、そう思った。
「…俺に会いに来たのか?」
「別に…、帰ります。」
チラリと少年を見て、頭を下げると俺は踵を返して生徒会長に背を向けた。
「待てよ、来たならあがって…」
俺の肩を掴んでひき止めようとした生徒会長の手を…
「…触るなっ!」
バシッと響いた音と共に払いのけて、俺は振り返る事もせず走り出した。
千崎さんが言った事を信じた俺がバカだった、なんて思いながら…。