『甘い蜜』
第27章 甘い蜜 27
―隼人side―
家の前に立つ人影を見た瞬間、これは夢なのかと思った。
会いたくて…
触れたくて…
ずっと話したかった相手がソコにいたから…。
「…触るなっ!」
だけど、これが現実。
俺はお前に触れる事も許されないのだろう…。
「兄ちゃ…、なんで泣いてるの?」
弟に言われ、涙を流している事に…初めて気づく。
「…何でもない。」
心配そうに眺めている弟に出来るだけ笑って頭を撫でてやった…。
千崎が俺は不器用だと言っていた。
…確かにそうかもしれない。
こうやって走り去るお前を目の前に写していても…追いかける事さえ出来ないのだから。