『甘い蜜』
第40章 甘い蜜 40
―千崎side―
「何だか楽しそうですね…?」
俺の目の前にいるこの子はホントに表情に出ないんだよねー。
だけど、長年の付き合いで俺には分かっちゃうワケで…
「…何がだ?」
おや、本人も自覚なしですか…
「神崎君と仲直りでもした?」
大方その類いしかないと思うけどね。
「何で仲直りなんだ?」
片付けていた書類から目も離さずにそれだけ言うと…
「出来たから提出しておけ…。」
―バタン。
それだけ言い残すと何処かへ出て行ってしまった。
「…ホント、不器用というか何というか。」
素直に言葉に出来ないだけだな…と思うけどね。
「ちゃんと話したのかな…アイツ。」
世話の焼ける子供というか…
手間の掛かる子供というか…ね。
「ったく、しょうがないな…一肌脱いであげますか。」
小さく溜め息をつくと…隼人から受け取った提出予定の書類を手に、俺も部屋を後にした。