肝だめし
第3章 逃走
交番があるのでここに長居は出来ない
「とりあえず中村のとこ行こか…」
「せやな…」
二人は駅前を離れて中村の家へ向かった
長い坂を上って最後の角を曲がると、あの闇が嫌でも目に入る
何度見ても馴れない異様な雰囲気
目を逸らしながら家の前に行って自転車を止めた
部屋の灯りは点いている
ヒュー…チリン…リン…
口笛やベルを鳴らすが反応がない
「またかよ!」
前回と同じ展開にウンザリする
その後しばらく粘ったが、中村は出て来なかった
小さいとはいえこんな深夜に物音を立て続けてたら近所の人に怒られそうだ
「一回離れよう…」
俺は田中を呼びつけると、角を曲がっだ先にある街灯の下まで移動した
「ムカつくな~」
「起きひんかったらどうする?」
「あそこに2人で入れるか?」
「無理!絶対無理!」
「せやろ?中村が起きても3人では怖いねん…」
「中止する?」
「ん~…」
半ば諦めかけていた時だった
「あっ!」
田中が指差す方向を見ると、一つの灯りがこちらに向かって来るのが見えた