肝だめし
第5章 浮遊
その気配はどんどん大きくなり、やがてそれが何処にいるのかハッキリ分かった
押し入れの中だ
この耳障りな高音は襖の中から聴こえる
「ひっ!」
押し入れの中に誰かがいる恐怖
叫ぼうにも声にならず身を捩って唸るだけ
そしてついにそれが動き出し、押し入れから這い出して来た
なぜ分かったか?
足首を掴まれたのだ
最初は真綿がまとわりつく様な感じ
それが徐々に絞られていくにつれ冷たい手だと気づいた
「うわぁ~!!!」
怖いなんてもんじゃない
毛穴が全部開いて冷や汗が吹き出す
その手は痛いぐらいに足首を絞め上げ、押し入れの中に引きずり込もうとする
「ん~!んん~!!」
必死の抵抗虚しく、身体は氷の上を滑るかのようにスーッと滑り始めた