肝だめし
第5章 浮遊
踏ん張ろうにも布団との摩擦がないのでどうにもならない
足は閉まってるはずの襖を突き抜け、どんどん押し入れに吸い込まれていく
「た、た、助けて!」
押し入れの中はどこに繋がっているのか
何が待ちうけ、どんな目に遭うのか
想像すればするほど怖くてたまらない
すると急に動きが止まった
何かが股に引っかかってる
実は押し入れに入ったのは左足で、右足は階段への扉を突き抜けていたらしい
つまりその間にある柱が幸運にも股に引っ掛かったのだ
襖は突き抜けるのに柱が引っかかる理由なんて知らない
足首を掴む手はひたすら引っ張り続ける
ガッ…ガン…ガガ…
やがて諦めたのだろう、足首を掴む手は気配もろとも消え去った
「助かった…」
安心したのも束の間、一向に金縛りが解ける気配がない
「なんやねん!終わったんちゃうんか!」
さっきの奴がまたいつ戻ってくるか分からない
せめて押し入れの中から足を抜きたくて、必死で這い出そうとするが無駄だった