肝だめし
第7章 微笑
その瞬間から女の気配をビンビン感じてしまう
思い込みとは怖いもので、心なしかあぜ道の空間が歪んでる様な…
あの顔でそこに立ってるかと思うと体がすくんで動かない
「ショウどうしたん?大丈夫やから…」
そう言って石原さんは地面に布のような物を敷いてくれた
あんたが余計なこと言うからやん…
心の中でボヤキながら真剣に供養の準備を始めた
持って来た酒や塩を並べてから線香に火をつける
そして石原さんに渡されたお経を手にすると、静かにそれを読み始めた
数日前までバカにしてた行為を真剣にこなす
女がそこにいると言われなければ、途中で止めたかも知れない
石原さんがそこまで考えてたかどうかは分からないけれど
我ながら人って変われるんだと思った
全部読み終えて石原さんの方を見る
彼女は静かにうなずき、おまじないの様な手振りで言葉を述べた
気がつけば後ろにいるみんなも手を合わせてる
さっきまで澱んでいた空気が、なんとなく落ち着いた気がした