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リアル

第1章 1

毎日毎日泣いてる
誰も居ない部屋は広くて恐ろしかった



重いランドセルが揺れ、肩に食い込む。痛みに堪えながら走る



急いで帰れば、まだお母さんが居るかもしれない。



家を出たお母さんが時々夕飯を作りに来てくれている



急いで階段を上がり二階の台所に向かう


肩で息をしながら、ドアを開け、ランドセルを下ろした


………! 居ない


肉じゃがが入った鍋から温かい湯気が出ていた



リビングの椅子に項垂れるように座り膝を抱えた




横にある父の部屋からテレビの音がする事に気づいた



父は仕事が忙しく、家に帰って来るのは決まって夜遅くだ




不思議に思い、へやのドアを押し開けた



だらしなく突き出たお腹を、オシャレとは言えないジーンズに押しこんでいる




坊主頭のおじさんが、横になりテレビを見ていた



後ろにいる私に気づき顔だけをこちらに向けた




あ〜お父さんのお兄さんです。お父さんの仕事の手伝いするからここに居ます。




大きな体の割に小さな声でぽつりと話した




顔をみると、もう何年も前にお婆ちゃんの葬式でみた事のある顔だった



56才くらいだろうか…遊び相手には年が行き過ぎだが、この家で一人ではない。と思うと嬉しくて
すぐに側に行って、にっこりと笑顔を向けた



こっちへおいで。遊ぼう。




誰にも言っては いけないよ。





誰にも 言っては いけないよ。





何するの?気持ち悪いよ。怖いよ。怖い。




涙を流している事に気づいて目が覚めた




過去の事は忘れたはずだったが、今でも時々同じ夢を見てはうなされて目が覚める




私ももう22才だ。いい加減引きずるなよ。自分で情けなく感じ、朝一で溜め息をついた




アイツと同じ服装…坊主頭の人を見ると目眩がし、吐き気がしたあの頃の小さかった自分を思い出す気持ちの悪い目覚めだ




ベッドに置いてある携帯電話が鳴った



電話に出ると、友人件お客様のハナからだった




はい…もしも…言いかけて
ハナがまくし立てる



今日来れる?彼氏に別れたいって言ったんだけど、揉めてて!



慌てた様子で話し始めた。その彼氏の存在も始めて聞かされ、寝起きと相まって訳が分からないまま、呼び出された

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