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陽だまりの唄

第1章 変わらない日常

休憩室の自販機でミルクティーを買ってデスクに戻れば、斜め前の席で脱力しちゃってる男性を一名発見!


「おかえりなさい、先輩」

と声を掛ければ、ほんのちょっと右腕を上げて応えてくれる。


「今回のツアーはどうでしたか?」

「時任…思い出させるんじゃないよ。二度と…あのババア達に関わりたくねぇんだ!」

両手で顔を覆いながら、唸っている。

「それ、毎回同じこと言ってますよね(笑)」

「いい加減違う奴を指名しろっての」


榎本孝 えのもと たかし 。


私より5年先輩なんだけど実年齢は不詳。

イメージは釣りとかやってそうなんだけど、引きこもり生活に憧れてるらしい。


特技はジャグリング。

私も会社の新年会や忘年会で見たことがある。
ドン引きするくらいプロ並の腕前。
学生時代は大道芸の道を志していたんだって。
でも挫折して某不動産会社の営業マンを経由して
紆余曲折を経てこの会社で働くようになったという謎多き先輩だ。


私と同じ、国内アサイン課所属。
繁忙期には添乗もこなしているベテラン社員だ。


いかつい顔に似合わず(?)
人当たりがよく気遣いも人一倍できる人だから、いわゆるおばさま世代からの指名が多い。

榎本先輩を指名してくるおばさま達の個性は半端なく強烈らしい…(笑)

以前、主任が爆笑しながら教えてくれた。

半年に一度位のペースで榎本先輩を指名してくる常連客もいると聞いたことがあるから、おばさま達のハートを掴んで離さない榎本先輩の仕事を一度でいいから見せてもらいたい…。

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