僕は君を連れてゆく
第27章 沸騰しちゃいそう
そっと、体を離した翔くん。
「起きたけど…」
「ん?」
あ…
キスしてる。
翔くんと今、キスしてる。
「影もキスしてる。」
「え?」
横を見るとくっついてる俺たちの影。
「智くん…好きだよ…」
そして、また、唇が…
重なりあった。
柔らかい翔くんの唇。
もう少し、もっと…
ペロッと俺の唇を翔くんが舐めて、ビックリして
口を開けたら、待ってましたというように翔くんの舌が俺の口のなかに入ってきた。
口のなかを翔くんがベロベロ舐めてくる。
背中に回していた腕は俺の後頭部と腰に移動していた。
「んっ…」
苦しくて息が漏れる。
その声は俺の声なんだろうけど初めて聞く声で
恥ずかしい。
「しょ、うん、くんっ…はぁ…」
「はぁ…あ…」
ジュルと音がして翔くんが俺から離れた。
「智くん…好きだ。」
「うん…俺も…」
翔くんを見ると唇がキラキラ光ってる。
きっと、俺も同じ…
「帰ろう…」
翔くんが俺の手を握った。
校門くぐったら繋いだ手は離れた。
だけど、心のなかは熱かった。
翔くんの、少し後ろを歩く。
もう、夕陽も落ちて街灯がつき始めた。
道路を見てももう、影は映らなくて…
屋上で見たくっついた俺たちの影。
「智くん…唇、乾燥しちゃった?」
無意識なのか、唇を触っていた。
翔くんはリュックのポケットを開けて何かを探してる。
俺は翔くんの唇がキラキラと光っていたのを思い出して…
「あった!リップクリーム!」
蓋を取って俺の唇にそれを塗ってくれようとする。
「あ、え?自分で出来る…」
「目、つぶって…」
静かに翔くんが言った。
俺は目を閉じた。
リップクリームが俺の上唇をなぞる。
次に下唇も同じようになぞる。
俺は目を開けた。
翔くんの顔がとても近くにあって…
「俺も塗ってあげる…」
翔くんが俺にリップクリームを渡した。
「目、閉じて?」
「え?マジで?恥ずかしいね…」
目を閉じた翔くん。
綺麗な顔。
俺は翔くんに近づいて少し、背伸びをした。
「え?!マジで?!」
リップクリームを翔くんに返した。
「智くん?」
翔くんが俺の肩に腕を回して顔を覗きこむ。
「かーわいぃ♡」
夜になって良かった。
だって、俺の顔は沸騰するくらい真っ赤だから。
◇おわり◇