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僕は君を連れてゆく

第27章 沸騰しちゃいそう


「…くん!」

体を揺さぶられる。

寝ちゃってたんだ…俺…

この声は翔くん…

「おーぃ!起きてよ!」

きっと、今、困った顔してるんだろうな…

ウフフ。

もう少し…

「風邪ひいちゃうよ~!おーぃ!」

ユサユサと体を揺さぶられるのが気持ち良くてされるがままになっていた。

「もう!起きないなら、キスしちゃうぞ!」

え?!

え?!

俺は目を開けた。

「あっ!」

「起きてないよ!」

やっちまったぁぁぁ!!!

目を開けた瞬間、翔くんと目がバッチリあって
翔くんは瞬きもせずに顔を真っ赤にした。

あぁ…
だって、キス…とか言うから…

しかも、起きてないよ、とか無理があるだろう…

「翔くんっ!あの…」

「智くん…待っててくれたの?」

「あ、うん。まぁ、気がついたら寝ちゃってて…」

「部活終わって着替えて帰ろうとしたら、下駄箱にまだ智くんの靴があったから…まだ、学校にいるんだと思って…」

俺の靴をわざわざ、確認してくれたんだ…

「寒いだろう?帰ろう?」

「うん!」

グラウンドにはもう、誰もいなくて…
見上げていた太陽は同じで高さになっていて、
夕陽が作る、オレンジに俺たちは囲まれていた。

「夕陽って綺麗だね。」

翔くんのほうが綺麗だよ。

「うん。オレンジ色。」

「智くんのほうが綺麗だよ。」

そうだね。俺のほうが…

「え?」

翔くんを見るけど、顔が影になっていて、表情がわからない。
ゆっくり近づいてきた翔くんに俺は抱き締められた。

翔くんの背中に夕陽が当たっている。

「智くん…体、冷えちゃったね…」

翔くんに、抱き締められて自分の体が思っていたよりずっと、冷たくなっていることに気がついた。

こんなに近くに翔くんが…

「翔くん…」

俺は恐る恐る、翔くんの背中に腕を回した。

「智くん…」

首にかかる翔くんの熱い息。

俺を抱き締める腕の力がさらに強くなった。



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