テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第31章 熱視線

********

夜中、隣で雅紀が寝返りしたことで目が覚めた。

布団からはみ出た肩。
少しだけ開いた唇。

さっきまで、ここで、雅紀の部屋のベットの上で
会えなかった時間を埋めるように求めあった。

こんな日がくるなんて。

身体は気だるいのに頭と心はスッキリしていて。

雅紀の寝顔は部活の合宿や、俺んちに泊まりに来た時に何度だって見てきた。

だけど、心が、想いが通じあってから見る寝顔は
やっぱり、ちょっと、違う。
今まで布団を並べて寝ていたんだ。
それが、こうして同じ布団の中にいる。

布団からはみ出た肩を撫でる。

この腕はもう、野球のためではなくて
命を救うための腕になる。

雅紀から聞いた話だと、あのグローブには
“世界NO.1”と書きたかったそうだ。

でも、目指すのは甲子園だし、世界ってどうしようと思い、あの文字にしたらしい。

にしても、平仮名だし。

字も汚いし。

雅紀らしいか。

次に会えるのは夏の終わりか。
冬の前か。

また、しばらく時間があいてしまう。

寂しいけれど、俺たちが選んだ道だから。

喉を潤そうと布団から出て冷蔵庫へ向かった。
途中のテーブルの上に俺のグローブがあった。
そして、油性のマジックも。

グローブをはめた。

開いたら、そこには…

「バカ…」

◇おわり◇



ストーリーメニュー

TOPTOPへ