僕は君を連れてゆく
第32章 違いのわかる男。
なかなか、離してくんない翔ちゃんの
腕のなかでモガモガしていたら、腕を急に
引っ張られた。
あら?
誰かしら?
「翔ちゃん!もう、いいでしょ?」
あらま!
ブー垂れてる!
「なに?待てないの?」
「待てないの?じゃないよ!待てないよ!」
我らが、スーパーアイドル相葉ちゃん。
屈託のない笑顔は昔と変わらないのに
髪の色を黒くして長さを短くした途端にぐっと色気が増して。
Jと並んで嵐の色男代表になってしまった。
だけど、こやつ。
最近はまぁ、知れ渡ってきたけど、
本当にせっかちなの!
もう、ニノちゃんの、待て!も聞かないくらいに!
俺と目があった途端、
ガバッと抱き締めてきて。
力加減バカ男
なんて、素晴らしいネーミング!
「くるしい!」
「これだよ~!これが、ニノ!」
力任せにギュウギュウ抱き締めてきて。
痛い!とか、苦しい!とか、言ってるのは最初だけ。
抱き締める強さ。
温もり。
全部、俺の。
俺も負けじと腰に回す腕に力を込める。
「んふふ。」
「ふふふ。」
「充電完了!!!」
相葉さんはあっさりと俺から離れた。
「そんな、不満な顔しないの!」とJ。
「ニノ、さみしんぼなの?」とおじさん。
「可愛いなぁ、ニノは。」と翔ちゃん。
俺はみんなの顔を見た。
不満な顔って…
どんな顔よ。
「どう?工くんと比べて?」
「誰が一番だった?」
一番とかじゃないのよ。
それぞれ、違うの。
それぞれが、俺の。
「今日は誰の気分なの?」
誰のって…
一人を選べって?
「わかってるでしょ?」
選べないよ。
「みんなで…ね?」
それぞれが違うの。
だから、俺はみんなのニノちゃんなんだから。
俺は顎を引いて、上目使いでみんなを見た。
◇おわり◇