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喫茶くろねこ

第12章 マリン&まろん

僕は、マリンを実家で世話してほしい、という話と、料理を教えてほしい、という話をした。
マリンについては、二つ返事でOKを貰えたが、料理については嫌がられた。

「人に教えるほど得意じゃないし、母さんだって料理の本を読んだり、テレビの料理番組を観ながら我流で覚えたの。独学よ、独学」
「前にどこかの料理教室行ってなかった?」
「レストランでイベント的に開催してる、単発の料理教室ぐらいは行ったわね」
「そんなのがあるんだ」
「最近は、動画で作り方を見れるアプリも使うかな。そうだ、こっちにいるあいだは、このタブレットを貸してあげるから、これで勉強しなさいよ。レシピを動画で教えてくれるアプリが入ってるから。じゃ、今日の夕飯から作ってね」

「ええっ?!」

「料理は、習うより慣れろ、よ。ふふふ、夕飯楽しみにしてるから!あ、夕飯に使う食材を買いに行くなら、お金は出すわよ」

なんだかうまいこと言いくるめられたような気がしないでもないが、その日から喫茶くろねこに戻るまでの1週間、僕は実家の料理担当になり、毎日料理を作った。

「家に帰るまでが遠足なのと一緒、後片付けするまでが料理よ!」

と、口うるさい母親にせっつかれ、食器洗いもさせられた。

そして、喫茶くろねこへと戻る日には数冊の料理本と、新しく契約したタブレットが荷物の中に加わっていた。


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