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喫茶くろねこ

第4章 内見(ないけん)

「あ、部屋、見てきたっすよ」

『なかなかいい部屋だろう?』

マスターが自慢気に言う。
この時、僕は“猫のドヤ顔”というものを初めてみた。はっきりとわかった。あの表情、間違いなく“ドヤ顔”だ。

『……。イヤなら他で部屋を借りても構わんよ。もっとも、うちみたいに賄いまでついて家賃と光熱費無料のところなんて無いけどナ』

…はっ!

「すすすっ、すいません、すいません!!いい部屋です!素敵な部屋です!春から宜しくお願いしますっっ!!」

「Oh..ユータ、ダイジョブ~?」

「…恐らく、マスターがドヤ顔だとかなんとか、いらんこと考えて怒られたんだろ。な?そんなとこだろ?新入り?」

……うぅっ、図星……。
顔が火照ってきて下を向いた。

「適当に言ったんだが、その反応だと図星みてぇだな(笑)」


勝手に脳内を読むテレパシー猫と、やたらに勘のいい発明家オジサンと、日本語が片言でたまに何言ってるのかわかんない外国人留学生…。…やりにくいトリオだな~。

『やりにくくて悪かったナ。全部丸見えだ、思考の垂れ流しには気を付けろ』

ギャフン!
僕はMP(マインドポイント=精神力)を削られるだけ削られて、フラフラになった。

「あ、あの、帰りの新幹線の時間があるので今日はこれで帰ります…」

「おぅ、気を付けて帰れよ」
「サヨナ~ラ~」
『勝手に人の脳内を読まない、実家の“可愛い”猫ちゃんによろしくナ』

…!!また読まれてる!
こ、これ以上傷が広がる前に、退散退散…。

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