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喫茶くろねこ

第6章 春 ~母と猫と入学式~

「おはようございまーす…」

約束の時間。少々緊張しながら店内へ入る。母親も後ろから続いて入る。

「いらっしゃいませ、ようこそ」

母と同年代ぐらいと思われる小柄で人の好さそうな女性が、マスターを胸に抱いて立っていた。
会うのは今日が初めてだったが、この人が先代のマスターの娘さん、山路さんだろうということはすぐに想像がついた。

「下地と申します。本日より息子がお世話になります、よろしくお願いいたします」

母が深々と頭を下げた。

「山路と申します。こちらこそ…なかなかね、アルバイトも人が見つからなくて、来ていただくと助かるんですよ」
『そうそう、お前は立派な戦力だ、よろしく頼む』

…戦力って。

『私には私の言葉を伝えてくれる“通訳”が必要なのだ。お前は優秀だ。ご母堂にもご挨拶しておこう』

そう言うとマスターは山路さんの腕から飛び降り、すすっ
と母の足元まで歩いてきた。

「なぁ~~ん」

可愛らしい声で一鳴きしたあと、頭をくりくりと母の足に擦り付ける。

「あらぁ~、可愛い黒猫さん」

母の目じりがこれ以上ないぐらい下がる。超にやけ顔だ。
しゃがみこんで背中を撫でたり、顎周りを掻いたりしていると、マスターが、ごろんっと仰向けに寝転がった。

マママ、マスター??おなか見えてますけど、大丈夫?

とうとう母に抱かれてしまったマスターは、母の腕の中でくつろいでいる。

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