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喫茶くろねこ

第6章 春 ~母と猫と入学式~

「あ、ごめんなさいね。これ、2階のお部屋の鍵です。契約書類のほうは先日送り返してもらったもので特に不備はなかったので、大丈夫ですよ」

そう言って鍵を渡された。

「あの、ホントに大丈夫なんですか、お家賃とか…」

「いいんですよ。どうせ余ってる部屋なんだから。空き部屋のまま放置した方が傷んでいくし、それに佑太くんには家賃分、しっかり働いてもらいますから。お母さん、聞いてらっしゃいますかね?うち、喫茶店だけじゃなくて、捨て猫の保護と里親マッチングもやってるんですよ。猫の世話とかもしてもらいたいので、住んでもらった方が助かるんです」

「ええ、聞きました。もっとも、息子が最初にこちらを尋ねた時は一匹もいなかったと聞きましたけど」

「そうですね。運良く引き取り手が見つかって、保護猫がたまたまいなかった時でしたね。今ね、子猫が4匹と、成猫が2匹いるんですけど、お母さん、見て行かれます?」

「ごめんなさい、今日はちょっと…」

「ですよね。いろいろ忙しいですよね」

「母さん、僕、2階に…」

母と山路さんの会話がひと段落ついたようなので声をかけてみた。

「あぁ、ごめんごめん。私も、部屋を見ておきたいから一緒に行くわ」

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