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喫茶くろねこ

第6章 春 ~母と猫と入学式~


***
いよいよ入学式の日となった。今日はスーツだ!
慣れていないので、ネクタイを締めるのに苦労する…。あれ、なんか…変? まぁ、いっか。

適当に締めて、朝飯を食べに店へ降りる。
が、店に顔を出すと、ニコルスに微妙な顔をされてしまった。

「やっぱ変っすか?」
「あー、ジャケット脱がナイ。だいじょーぶだいじょーぶ!」
「ニコルス…ちょっと日本語上達した?」
「アリガトー。練習シタ!!」

ガチャ…。
裏口のドアが開き、佐々木さんが顔を出す。

「おっ!おまっ?!なんだそれ。へたくそだなー。ちょっとネクタイかしてみろ!」

佐々木さんは僕のネクタイを解くと、自分の首にかけ結び始めた。少し緩めた状態で首から外し、僕の首にかけなおす。

「そのままゆっくりと締めてみろ」

言われるままに締めなおすと、ネクタイが綺麗におさまった。

「「おぉー」」

あまりの鮮やかさに、思わずニコルスとハモってしまった。

「ニコルス、俺、きょうは飯いいわ。コーヒーだけ貰う」

そういうと、コーヒーを愛用のマグカップに注いでまた裏口へと消えていった。

佐々木さんが食欲ないとか珍しいな。発明が行き詰ってんのかな。まぁ、まともな発明してるの見たことないけど…。

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