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喫茶くろねこ

第8章 先代マスター、ヒロさん

…マスター、捨て猫だったんすか…。

『うむ。捨て猫時代の話、聞くか?』

…いや、別にいいっす。

『じゃあ、マスターとの出逢いから話すか』

それもいいっす。

『…つれない奴だな、いいから話を聞けって』

強引ですね……。

『あれは、私が生まれてすぐの、まだ目もよく見えていない頃のことだった…』

そんな赤ん坊の頃のこと、覚えてるんすか?

『…いや、覚えてない』

えぇー…。覚えてないのに、何を語る気なんすか…。

『マスターが、拾ってくれた時のことを話してくれたことがあるのだ。私は覚えていないけれど、ゴミ置き場に棄てられていたそうだ。紙袋に入れられて、袋の口を閉じた状態でな…』

…袋の口を…

『うん。口の部分をガムテープで止めた紙袋が、ガサゴソと動いていたそうだ、それで不審に思ったヒロさんが…』

ヒロさん?

『先代マスターの名前だ。というか、話の腰を折るな!』

すみません…。

『ヒロさんが、袋を拾って中を確かめたら、中にまだ赤ん坊だった頃の私が…いたんだ』

そうだったんですか。

『そして、マスターは私をこの店に連れて帰った。店のキッチンの隅に段ボール箱を置いて、その中にタオルを敷いてもらって、ヒロさんが店に出ている間は、そこが私の居場所だった。夜はヒロさんの家に連れて帰ってもらって一緒に寝た』

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