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喫茶くろねこ

第9章 夏 ~恋の季節と、占いと~

『そーやって物事を悪いほうに悪いほうに考えるんじゃない。希望が持てる考え方をしろ。新しい出会いを探す時にそんな後ろ向きな考え方じゃ見つかるものも見つからん』

…まさか、猫に諭されるとは思いませんでした。

『茶化そうとするな。お前は、自分に自信が無い』

「マスター、ごめん。私もそろそろ帰るね?明日も早いし。じゃぁ…下地君、またね」

ずっとマスターを撫でていた中井さんが、手を止めて立ち上がった。

『お、おぉ。美佳ちゃんありがとう。おやすみまた明日』
「あっ、お疲れっす」

『話を、戻そうか。お前は自分に自信が無い』

…そんなことは

『ある。そんなことある。見てればわかる。でも、お前はお前だ。兄貴や他の誰かと比べて自分を卑下する必要はない』

…髭(ひげ)?

『茶化すなと言ってるだろう。私はマジメに話しているんだ』

…すみません。

『お前にはお前の、いいところがある。当然至らないところもある。でも人間は不完全な生き物なのだからそれは当たり前だ。お前の兄貴だって、母親だって、いいところもあるし、ダメなところもある』

兄貴は、よく出来たうちの親自慢の兄貴で

『お前の立場からはそういう風に見えるだけだ。兄貴にだって至らないところはあるし、それなりに苦労もしているし、努力もしている』


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