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喫茶くろねこ

第2章 マスターくろねこ

「その発明家の方と派遣さんはどこに住んでいるんですか?」

アルバイトの人間が、全員部屋を提供されて家賃無料の恩恵を受けている『住み込み』タイプのアルバイトなのか、気になったので聞いてみた。

『うむ。発明家はな、ここの地下室を研究室として使っておるが、住んでいる家は別にある。美佳ちゃんは…』

美佳ちゃん?

『派遣社員の仕事と掛け持ちでアルバイトをしている中井美佳ちゃんだ。道路を挟んだ斜向かいのアパートに住んでおる』

斜向かいのアパート??

『先代のマスターは、喫茶店のマスターだけでなくアパートのオーナーもしていてね。もっとも、アパートのほうは住み込みアルバイトではなくて、借主として家賃を払って普通に住んでいる人間のほうが多いし、美佳ちゃんも、家賃は無料だけど、水道光熱費は普通に自分で払って貰っているよ』

こっちの部屋が水道光熱費まで無料なのは…?

『それは、店と同じ建物だからね。わけて計算するのも面倒くさいから、全部私が払っている』

猫なのに?

『バカ。自動引き落としだよ。別にお金銜えて窓口に払いに行ってるわけじゃないよ』

銀行口座、持ってるの?!

『通帳の名義はマスターの娘さんだ。さすがに猫名義での通帳は作れなくてね。協力してもらった』

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