ガラスの靴がはけなくても
第6章 年下の男の子
足早に去ってく二人はきっと私をつまみに飲みにでも行くんでしょうね。
チラチラ振り返ってこっちを見てくるんだけど、二人のその笑顔がなんか妙に勘にさわる。
こっそりとため息を落として澤村くんに向き合った。
「お疲れ様。それで、どこに行くの?」
私の言葉に少し驚いた表情のあと、ほっとしたような笑顔を浮かべた澤村くん。
「近くによく行く居酒屋があるんでそこに。良かった。逃げられなくて」
「あんなに堂々と誘いに来られたら逃げようがないよね」
「あっ、やっぱり逃げるつもりだったんですね」
その言葉には返事をせずへらりと愛想笑いを浮かべてみるけど、彼はそんなことなんて気にしてない様子。
同じ会社にいるわけだし、しかも同じフロア内だし。
それに、いつまでものらりくらりと交わせる相手じゃないことも分かってた。
そう、だって彼は営業マン。相手にYESを出させることは得意分野なんだから。