ガラスの靴がはけなくても
第7章 春の風
そんな法則に気付いた時に、澤村くんに文句を言ったらしれっとした顔をしてこう言われた。
『ただでさえ当て馬ポジションにされちゃったんだから、ちょっとくらいは桐谷部長に反抗させて下さいよ』
やめてってまじで思ったけど、面白がって続ける澤村くんには何を言っても無駄だと悟った。
だって、澤村くんは絶対に私のことなんかより部長のことが好きなんだもん。
「おい、澤村!そんなとこで女を口説く暇があるならさっさと外回りで契約の一つでも取って来い!」
こうやって、部長のヤジが飛んでくることももうお決まりでそれに応える澤村くんも楽しそうで。
本当は部長の気を引くために私を出しに使ってるんじゃないかなって思えるほど。
ただ会話に挟まれる私はなんの得もなければ楽しくもなんともない。
ほら、今だって私が部長に睨まれた。