ガラスの靴がはけなくても
第7章 春の風
そんな私達の様子を見て、一番楽しそうに…いや、面白がってるのは言うまでもなく美しい先輩。今日が週末と言うこともあって、仕事が終わるとその足でよく行く会社近くのダイニングバーにひっぱられるように連れて来られた。
澤村くんとの食事のくだりを一通り話すと、笑い出す香織さん。
「自ら当て馬になりに行ってるじゃないのそれ。なに、澤村くんってドMなの?」
「知りませんよ。そんなこと」
「でもそのサッパリした感じあたし好きだわ。見た目だけじゃなくて、思ってたよりずっといい男ね」
それは私も思う。前にも増して私に絡みに来るようになったけれど、個人的な連絡なんかは一切なくなった。
彼のアタック…って言い回しが古いのは置いといて、嵐の様なアプローチは今でも続いているようにみえてあの食事をした日に終わっている。
きっと、私に悪かったって思わせないようにわざと絡んでくれてる。
「おしいことしたって思った?」
「そんな風に思ってないです」
意地悪く聞いてくるけど、本当にそんな風に思ってないし、私がそんなこと思うなんておこがましい。
たった一度の食事だったけれど、最初あんなに乗り切じゃなかったのが申し訳ないと思うくらいに楽しかった。
……だから最近の絡みのせいで起こるとばっちりは多目にみようと思う。