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ガラスの靴がはけなくても

第7章 春の風


チーズの盛り合わせの中からチェダーを選びガーリックトーストの上にのせる。
それをつまみに白ワインを口に含んだ。
安い居酒屋だろうが、そこそこ値の張るフレンチだろうが最初の一杯はワインを飲む香織さんに付き合って飲んだのは、大好きなビールを飲むよりさっさと酔えるから。

だって、香織さんに付き合うなら先に酔ってしまった方がいい。シラフで付き合うには厳しいネタばかりをふられるから。



「とりあえず、桐谷さんへの気持ちは間違いない訳でしょ?」



……ほらね。



「なにがとりあえずか分からないですけど、そうですね」



変にごちゃごちゃ言うより、素直に認めた方が早い。あたしの慌てたりする反応を楽しんでるところがあることくらい分かってるんだから。
ほら、今だってあっさり認めたことに少し驚いた様子を見せたけどつまらないって顔してるもん。

そんな香織さんに気付かないフリをして少し渋みを感じる香りの良いワインを口に含む。


部長への気持ちは間違いない……はずだ。


どこに惹かれただとかなにがあったからだとかじゃなく、私の心の隙間に入り込んで急激に揺さぶられた。
流されて勘違いしてるって思ってたけど。いや、思いたかったけど。そう思えないくらいに気持ちがはっきりしてるから。




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