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ガラスの靴がはけなくても

第7章 春の風



「だから行かなくちゃ」



「そっか。引き留めて悪かった」



「うん、じゃあね」



アリガトウと言えるほど大人じゃないけど、笑顔を向けてサヨウナラを。



「本当に悪かったって思ってる。いっぱい我慢させてたの気付いてたのに」



背中を向けた私にかけられたその言葉の真意も呼び止められた理由も今の私にはもうどうでもいいことで、だからってやっぱり私は悟のことが嫌いじゃないみたいで。

久しぶりに会って動揺したけど、顔をみて話せばもう吹っ切れていたし未練もないんだって確信に変わった。


それでも姿を見て声を聞くと少しばかり切なくなった。懐かしさだとか、その時の気持ちだとかが自分の中に溢れたのを否定することはできないけど。
ーーーどうしても違うって伝えないと。



「元気でな」



駆け出した私に大好き"だった"人からの声が届いた。


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