ガラスの靴がはけなくても
第8章 眠りたくない夜
あの日泣いていたのも、始めてキスされたのも今みたいに車の中だった。
その時は心の中には違う人がいて、まさか部長の事をこんなに好きになるなんて思いもしてなかった。
あの日と同じように泣いて、キスをして。
だけど、状況が同じでも今日はこんなにも幸せな気持ちになれて。
タバコをふかしながら車を運転する部長を盗み見て、顔には自然に笑みが溢れる。
そんな私に気付いて、
「自分の家でとか言った割に余裕そうだな?今夜は寝れると思うなよ?」
すっごく素敵な笑顔を浮かべた部長に一気に冷静になった。
「今日は送り狼になってもいいように自分の車だしな?」
鼻唄を歌い出しそうなくらい上機嫌な彼に私は口をつぐむしかなかった。