ガラスの靴がはけなくても
第8章 眠りたくない夜
「お邪魔します」
「どうぞ」
お客さん用のスリッパを出して、リビングへと案内する私は声が裏返りそうになるくらい緊張していた。
深夜まで開いてる大型の量販店に行って部長の下着と部屋着を買ってきた。
到着するまでの間にも散々からかわれて、家に着いた今は緊張のピーク。
ソファーに腰かけて部屋の中を物珍しそうに見ている部長にお茶を出そうとキッチンに向かう。
えっと、コーヒー?それとも温かいお茶?
カップと湯飲みを眺めていたのに、今部長が私の家にいるって言うことをまたまた意識して体温を上昇させる。
想いを伝えた途端に、自分の家に招くなんてどんだけ期待してるの?!って感じだよね!
さすがにちょっと大胆過ぎた……かも。
だけど、部長には素のままの自分を知ってもらいたいから。
「コーヒーとお茶どっちが…きゃっ!」
「おまえ。…とか古い?」
気付いたら後ろにいたらしい部長に抱きしめられて、心臓が飛び出たんじゃないかと思うくらいに驚いた。