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ガラスの靴がはけなくても

第1章 眠れぬ夜

人の幸せを祝えるのは自分もまた幸せな時だとよく言ったものだ。

たった数時間前に社会人歴と同じだけ付き合ってきた人にフラれた私は、到底目の前の幸せを祝う気になる訳もなく。


むしろ妬みすら感じるくらいで。



あぁ、ダメだ気分が悪い。
気分が悪いだけじゃなくて本当に体調もおかしい。



「お先に失礼します」



ようやく絞りだした声は消えそうなくらい小さかった。


大丈夫。感じ悪かったかもしれないけど誰も私を見ていなかったはず。





……もう一度連絡してみようか。
いや、だけど何て言えばいい?



"嫌だ"


"別れたくない"


"悪い所は全部直すから"


"これからも側にいさせて"






浮かんでは消えていく私の本音はどれも口に出すことは出来ない。




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