ガラスの靴がはけなくても
第1章 眠れぬ夜
「男ってのはさ、単純に見えて複雑な生き物なんだよ。ワガママな女が嫌いって言ってたってワガママ言って欲しい時もある。泣く女が嫌いって言ってたって泣いて欲しい時もある」
部長の言わんとすることは分かってる。
それを分かってた上で、私は今更どう自分を出せばいいのか分からなくなっていたんだ。
そんな付き合いに疲れてたんだ。彼も。そして私も。
「ただな、好きな女を甘えさせてやれない男はダメな男だ。ひっどい男だ。そんなクソヤローは別れて正解」
ふざけた言い方だけどちゃんと私の気持ちを楽にしてくれる。
ぐちゃぐちゃと頭を撫で回してくれる大きな温かい手に安心する。
こうやって泣いたのも、こんなに頭を撫でてもらったのもいつぶりだろう?
会社の上司だろうがなんだろうが今だけは甘えさせてもらおうと思う。私だって誰かに甘えたい時だってあるんだ。