ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
「ここは学校か」
呆れた声が聞こえ、足音が近付いて来る。
背中に体の全部の神経が集まったみたいに、その存在を敏感に感じとる。
「部長!おはようございます。藤野さん、男と別れたんだって」
耳打ちをするように話してるけど筒抜け。
そういうわざとらしいのやめてくれないかなぁ。
「ふ~ん…。そりゃ災難だな」
こっちもかなりのわざとらしさ。
思わず見ると、意地悪く笑う部長と目が合う。
パッと目を反らすと、乱暴に椅子に腰掛けてパソコンを立ち上げた。
「藤野。災難ついでに今週のお茶当番お前な」
「なんで!」
「部長様の言うことは?」
「「「ぜった~い」」」
「………。お茶入れてきます」
ここに私の味方なんて一人もいない。
もうついてなさすぎるよ。