ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
先輩じゃなかったら間違いなく首絞めてる!
二度とそんなこと言えないように!
私に口を塞がれつつも、親指を立てる香織さんが憎たらしい。
更にはあっという間にみんなから囲まれた私が、戸惑ってる隙に逃げ出す始末。
香織さんのばかっ!薄情者!!
「藤野さん、俺とパーッと飲みにいきましょう!」
「先輩。私がいい男の人紹介してあげますよ~」
「いや、私は…」
「藤野」
「藤野さん」
「莉乃ちゃん」
良くも悪くもアットホームなうちの部署は、人の失恋さえもお祭り騒ぎ。
こんな時くらいほっておいて欲しいのにそうも言ってられない。
「おいこら!いつまで騒いでるんだ」
そんな中響いた一つの声にみんなの視線が集中する。
私は振り返ることが出来なくて、代わりにその声にドキリと心臓が跳ねた。