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ガラスの靴がはけなくても

第2章 キスの温度

なんとか気持ちを立て直して、用意したお茶とコーヒーをそれぞれに配る。

早くしろと急かした部長はデスクにいなくてホッと胸を撫で下ろした。


集中しなくちゃ。
仕事に集中してれば余計なことも考えないだろうと、資料に目を通し書類の作成に勤しむ。

パソコンと向かい合って何かを忘れようとするなんて、ちょっと虚しい感じもしないでもないけど。

だけど、仕事中なんだからそうするしか仕方がない。

とりあえず早く退社時間が来て欲しい。でも、そんなことを思っている一日はいつもより長く感じる。

ここにいるといくら集中しようと気を反らしても落ち着けない。

ついこの間までは当たり前に同じ空間にいて、当たり前に話して、当たり前に一緒に仕事をしていたのに。
その当たり前だった頃、自分はどんな感じでここに座っていたのか、それももう思い出せない。

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