
ガラスの靴がはけなくても
第3章 理性と本能
だだっ広いリビング。目の前には黒いラグマットの上に置かれたガラスのローテーブル。そしてその数メートル先には立派なテレビ台に乗った大きなテレビが置かれている。
必要最低限のものが置かれているだけのようで少し寂しい印象がする全く見覚えのないこの部屋。
私が寝転がっているのはソファーで……って、ちょっと待って。
嘘…!!何を呑気に部屋の観察をしていたんだろう!
慌てて起き上がり、自分を見てみるが衣服の乱れは特に見られない。
ホッとしたのも束の間、状況が悪いことに変わりはないのに気付く。お酒は弱くない、はず。なのにこの醜態。全くもって記憶がない。
て言うかまず、ここ誰の家…?
まさか……
「澤村君の家…?」
「何が"澤村君の家"だバカ!」
「いった…!」
ゴツンと固いモノで頭を打たれる。
振り返らずとも声の主はよく知っている人のモノで。
「ぶちょ…」
おもむろに後ろを振り返ると、髪を濡らし明らかに風呂上がりのセクシーな…いや、鬼の様な顔をした部長様が私を見下ろしていた。
