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ガラスの靴がはけなくても

第3章 理性と本能


爽やかな笑顔の中には、しっかりと私を見据える瞳。さすが営業マンと言わんばかりの彼の意思の強さがその瞳には宿っているように見える。

今まで会社で話していた時には爽やかで明るくていい子だなって印象しかなかった。
だけど、今目の前にいる彼は完全に男の顔をしてる。
そんなにも知らない澤村君だけど、ここにきて初めて苦手だと思った。
押しに弱いのは重々承知しているが、何が嫌だってストレートに来られるとどう返せばいいか分からなくなるから。



……結果的に押しに負けて番号を交換することになったんだけど。


私ってば本当に優柔不断。


何が理由かはっきりしないけど自棄になってとにかく飲んだ。
酒は呑んでも呑まれるなとは言うけれど、呑まれてしまいたい気分の時だってある。



「ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」


「大丈夫」


そんなやりとりをしていたことだって覚えてる。
澤村君が心配そうな顔で私を覗き込んでたことだって覚えてる。


お会計をして、二次会の誘いを断ってタクシーを拾おうと思ってた所まで覚えてる。






なのに。


「ここ…どこ?」


今の状況が全く分からない。

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