ガラスの靴がはけなくても
第5章 赤のしるし
さっさと仕事を終わらせて帰ろう。
……早く帰りたい。
こっそり顔を叩いて気合いを入れ直す。
間違っていたデータをひたすらに打ち込む。
指がつるんじゃないかってくらいにキーボードを素早く叩く。
集中して!集中!!そして正確に!!!
格闘すること小一時間。
「で、出来た」
やれば出来る私!!
時計に目をやると11時少し過ぎ。
どうにか今日中に間に合ったとホッとした。
「部長。遅くなりまし…た…」
あれ?
斜め向かいの部長の席に目をやると、
「ぶちょー…?」
パソコンと雑に積まれたファイルの間から、艶やかな黒髪と長い腕が見えた。