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夢現、

第1章 夢でもいいから

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( `・З・´o[side ⓢ ]o

深い海の底にいる。
不思議と呼吸は苦しくなくて、でもそれは
酸素ボンベを付けているからとかそういう理由でもない。

海面は2m上、くらいだろうか。
俺の脇をクマノミやら、色とりどりの
熱帯魚が通り過ぎてく。
あぁ、綺麗だな。そう思って
感嘆の息を漏らしたその時、

ゴポォ、という不穏な音と共に
口の中に塩辛い水が入り込んできた。

正気に戻る。やっべ、俺、カナヅチなのに。
ってか、なんでそもそもこんな海の底にいる訳?
ロケだっけ?にしたってこんな内容俺には
ハードモード過ぎやしませんか?事務所さん。

そんなことを考えながら何とか海面に浮上しようと
カナヅチの威厳を賭けた平泳ぎでもがく。
しかしどうにも効率が悪い。手足を動かしては
いるけれど1mmも前に進まない。

うわ、本格的にやべぇ…息も…もー続かねえな…。

ここまで5分もかかってないと思うけど、
一応これでも今年34だ。いい大人だ。
よし、この海で天寿を全うするか…

そう覚悟を決めた刹那、
ものの数分で無我の境地に辿り着いた俺を、
海面上からか呼ぶ声がした。

『誰…だ…?』

そう言った拍子に、さらに口中に
海水が入り込み、入りどころが悪かったのか
気管まで波が押し入る。

塩辛い口中と、酸素の居場所をぶん取られた
肺を抱えながら、俺はその場にうずくまった。

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