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夢現、

第1章 夢でもいいから

(`・З・´o[side ⓢ ]o

『…やっぱまだ死にたくないよおおお!!!』

その自分の絶叫で、目が覚めた。

重たい瞼をこじ開けて周りを見渡すと、
いつも通りの、俺が暮らすシェアハウスの
リビングが暖色照明で照らされていた。
ふと右手に嫌に力が込もっているのに気づくと、
身を預けていた革製のソファの肘置きを
目一杯握りしめている。

そして頭上から、一言。

N「随分と、大層な夢をご覧になってたんですね?」

小馬鹿にしたような、面白がっているような
笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込む。

気まずさからニノから目を逸らす。と、
ソファの目の前のローテーブルには
「グアム観光」やら「神秘のベールに包まれた海の世界」やら、それらしい資料やDVDが乱雑に積まれていた。

ここでやっと、自分がシェアハウスのソファで
うたた寝をして、悪夢を見たことを把握した。
確か、ZEROで海外の海の問題について
「イチメン!」を1回やることになって、
その下調べをしていたんだ。

壁掛け時計を見ると、午前2時。
レギュラー番組の収録が終わったのが22時過ぎだったから、そこから帰ってきて資料を見ながら構想を練っていた。
徐々に記憶が蘇ってくる。

N「その様子じゃ、収録終わって帰るなり
ZEROの特集の下調べでもしてたんでしょ。
んで、いつの間にか寝落ちちゃって。
カナヅチな翔さんは海でお亡くなりになるっていう
悪夢を見た、そんなとこですかね」

俺が今、自分でようやく今までの経緯を
把握したというのに、ニノの推察のほうが
的確かつ分かりやすい。エスパーかよ、ニノ。

N「今、エスパーかよ、って思いました?」

どうやらそれすらも見透かされているらしい。

N「分かりますよ、翔さん顔に書いてますから。
“怖い夢見た〜どうしよう“、って。」

狡猾な笑みを浮べながらそんなことを言うニノに、
今回ばかりは降参する他なかった。

『おみそれしました』

N「んふ、結構。私夜食作りますけど、翔さんも
要ります?それとも、悪夢の後なら食欲なんてないか

『是非ご馳走になります』

思わずニノの言葉を遮ってそう言った。
悪夢を見たあとは思いの外体力を消耗するものだ。
キッチンに立つニノにお願いの意味を込めて
両手を合わせると、ニノはやれやれといった様子で肩を竦めて冷蔵庫の中身を漁り始めた。

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