半社会人(仲村慶彦の憂鬱な日々社会人編)
第57章 デビュー戦
カウント8で弾丸は立ち上がり、ファイティングポーズを取った。
浮き足立った弾丸の隙を突いた攻撃だ。先にデビューしているから、この雰囲気には弾丸より慣れている。
セコンドのストライカーも指示を出す。
「足を使え!カウンター狙いにきてるぞっ!」
一度ダウンして緊張がほぐれたのか、弾丸の動きが速くなった。
そして、弾丸独特のノーモションからのジャブが相手の顔面にヒットする。
「いいぞ、ジャブを有効に使え!」
オレは立ち上がり、弾丸に声援を送った。
「ラスト10秒!」
ストライカーが残り時間を教える。
そして第一ラウンド終了のゴングが鳴った。
「ふぅ~、危なかったね!」
沙織が興奮して声が上ずってる。
「ケースケ、次のラウンド気をつけろ!」
オレの声援は届いたのだろうか、こちらを向き、軽く頷いた。
インターバルが終わり、第二ラウンドのゴングが鳴った。
弾丸は素早く相手の距離を縮め、ボディから左のスクリュー気味のフックで相手をダウンさせた。
「よし、いいぞケースケ!お前ならKOできるぞっ!」
もう、声がガラガラだ~!