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半社会人(仲村慶彦の憂鬱な日々社会人編)

第57章 デビュー戦

野村はあれ以来、会社へは来なくなった。

さすがに沙織に殴られたという恥ずかしさからなのかは解らんが。

亜美とも連絡はしていないみたいだ。
どちらかと言えば、亜美より、野村が勝手に好きになったらしく、オレが亜美の兄だと知ってからは何の発展もなかったらしい。
とりあえず一件落着というとこだろう。


そしてついに、弾丸のプロデビュー戦を迎えた。

「ヨッシー、今日は会社の先輩も一緒に来るんだろ?だったらリングサイドで観戦してくれよ」
と弾丸に言われ、オレは沙織とリングサイドで観戦する事となった。

対戦相手は弾丸より一足早くデビューしており、一戦一勝でKO勝利をしている選手だった。

オレと沙織はリングサイドで弾丸の登場を待った。

「うゎ~、何かドキドキするね、この雰囲気!」

沙織がやや興奮ぎみにはしゃいでいた。

「大丈夫かな、ケースケ…」

デビュー戦だし、この雰囲気に飲まれなきゃいいんだが…

「来たわよ、仲村君!」

花道から弾丸が現れた。
ストライカーをはじめ、数人に囲まれリングインした。

「青コーナー、123パウンド二分の一、阪田ジム所属、佐野ぉ~圭佑ぇ~」

弾丸が四方に頭を下げた。

「尚、佐野選手は本日がデビュー戦です!」

リングアナウンサーの紹介で弾丸に声援が飛ぶ。

「頑張れ~!」

「負けんじゃねーぞーっ!」


リングの中央で両者が対峙する。

弾丸はやや緊張か、いやかなり緊張してるかもな。

コーナーに戻り、マウスピースを口に含んだ。

「すごい緊張感…」

沙織が膝の上で拳を握りながらリングに釘付けになってる。

オレも固唾を飲んでリングを観ていた。

【カーーン!】

第一ラウンドのゴングが鳴った。

相手は弾丸の懐に入り、あっという間に連打で追い込み、ダウンを奪った。
開始から僅か数秒だ。

「ケースケ!立て!落ち着くんだっ!!」

オレは大声で叫んだ。


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