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ナイト・ナイト・スウィート・ドリームス

第2章 孤独の温もり

[あんずへ]


封筒にはそう書いてあった。

私は迷わずその封筒を開ける。
封筒には3枚紙が入っていた。


『もしも私 柏由佳子、夫の柏正太郎亡くなった場合
 遺産はすべて娘の柏あんずが授けることにする。』


それだけ書いてある紙が1枚。


『行き場に困ったらこの家は売っても何をしても構いません。
 私の知り合いが経営しているマンションに空きがあるので、そこに行ってください。
 家賃は私の口座から引かれるので、お金の問題は心配しないでください』

そう書いてあり、裏には住所が書いてある紙が1枚。


最後の紙には、一言だけが書かれていた。


『これからは、自由に生きなさい』





あの夜母親の喘ぎ声に耳をふさぎ我慢した、いじめられながらも必死で我慢した、孤独になったあと、かわいそうと目を向けられたとき我慢した、

涙が粒となって溢れた。

私は迷う必要なんてないんだ。
もう一人ぼっちだけど、ひとりだからこそ行動しなければいけないときが来たんだ。


(ありがとうございました。今まで)


感じたこともない安心感をその紙に感じた。
初めて私のことを気にかけてくれたお母さんの姿に、満たされた気分になった。



(行かなきゃ何も始まらない)



私は荷物をすべてまとめると、紙に書いてある住所へと向かった。
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