誰も見ないで
第8章 記憶
「はい?」
誰が来たかはわかってる
ノックしてからちゃんと返事を待つのは瑞稀君ぐらい
「僕、だけど……」
ほらね、やっぱり
「入っていいよ」
俺がそう言うと、遠慮がちにゆっくりと扉が開いた
姿が見えた瑞稀君は
どこか気落ちしてるような雰囲気
「どうかした?」
前にいつもこんな風に話してたっていうのを覚えてるのか、俺がベッドの下に座ると隣にちょこんと座ってくる
それを可愛いなって思いながら用事を聞くと、瑞稀君は俯いてしまった
元気にはなったんだけど、たまにこうやって黙っちゃうのは変わらないんだよね
返事が返ってくるのを特に急かしたりせずに待っていると、暫くして小さな声を瑞稀君が出した
「ん? ごめん。もう1回言って?」
聞き取れなかったことを謝って、もう1度お願いする
そして改めて言われたのは
「お兄ちゃんは……男同士の、恋愛、って…………どう思う……?」
こんなことだった
心臓が飛び上がって口からでるんじゃないかってぐらいびっくり
まさか思い出した
とかじゃないよね……
期待する心を鎮めて
なんて返そうか、と考える