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誰も見ないで

第8章 記憶


でも笑いかけられた時のその笑顔に自分の顔が熱くなるのを感じてしまって、不自然に距離を取って熱を冷ました


少し落ち着いて話し始めると、お兄ちゃんはいろんな話をしてくれる

その中で1番話してる時間が長かったのは幼馴染だって言う「正樹君」の話題


すごくかっこよくて
頭も良くて
スポーツ万能で
優しくて

非の打ち所がない人


そんな話を楽しそうにするお兄ちゃん


なんだか、胸がざわざわする
ヤキモチ妬いてるのかな

図々しいな僕

でも
前がどんなだったかとか
全然わからないんだもん


お兄ちゃんの幼馴染なら僕だって仲が良かったのかもしれないけど

覚えてないんだから、仕方ない


そして長く続いていた話の終わりに「今度家にも連れて来るよ」と言われて「嫌だ」なんて言えない僕は


「楽しみにしてるね」


なんて白々しく答えていた



「はぁ…………」


1人、自分の荷物がまだ返って来てない部屋に戻ってベッドに沈む

布団を丸めてそこにむぎゅ、と顔を押し付けた


「うぅぅぅ……」


そして外に聞かれないように唸り声を上げる


モヤモヤする
お兄ちゃんの幼馴染

女の子にもすごくモテる……


今度家に来るって

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