マリア
第12章 追走曲
「あ、あの、翔くん?」
立ち上がって、帰り支度を始めた翔くんに、慌てて声をかけた。
「その…なんて言ったらいいのか…」
翔「なに?もしかして、付き合ってくれるの?」
「だからそれは…」
翔「…冗談だって?」
と、イタズラっぽく笑ってみせる翔くん。
今まで、ずっと僕の側にいてくれて、
僕のことをあれこれ気遣ってくれた、
僕の、大切な友だちだった君。
楽しい思い出だけでもなかったけど、
君と会えてよかった。
君が友だちでよかった。
翔「じゃ、礼音によろしく言っといて?」
「…うん。」
翔「俺より男前の彼氏、早く見つけなよ、って、伝えて?」
「フフっ。それ、難しいと思う。」
翔「それと…」
一瞬、翔くんと僕の視線が絡み合う。
翔「…やっぱ、やめた。」
「え、なに?」
翔「俺、やっぱ無理だわ。」
「だから、なんの話?」
翔「智くんの恋愛だけは応援できない。」
「僕の…って?…あっ!?」
真っ赤になる僕を、翔くんがニヤニヤしながら見ていた。
「もー、だから、松本先生のことは関係ない、ってば!」
翔「あれ?俺、松本先生、って一言も…」
「あっ!?///翔くんのいじわるっ!」
翔「痛い、って!?智くんて、すぐ手が出るんだもんなぁ。」
この日を最後に、
僕と翔くんは、
友だちであることをやめた。
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