マリア
第3章 間奏曲
「翔くん!」
僕に気づかず、走りすぎようとしていた翔くんに声をかけた。
物凄い勢いで走っていた翔くんは、急に立ち止まったせいで、前につんのめってしまったけど、
何とか堪えてこちらを振り返る。
「ありがとう。礼音に会いに来てくれて?」
翔「あ…うん。」
翔くんはばつが悪そうに頭を掻いた。
「翔くん、こっち。」
僕は翔くんの手を引き、もと来た道のりを引き返した。
「メール、見てくれたんだ?」
あの電話のあと、礼音が入院した病院と病室を伝え忘れていたことを思い出し翔くんにメールしていた。
「あれ、翔くん部活は?」
翔「早めに切り上げてきたんだ。」
「ありがとう。礼音、喜ぶよ?」
翔「……うん。」
翔くんは照れ臭そうに鼻の頭を掻いた。
翔「ところで、礼音の様子は?」
「う…ん。わりと元気。」
電話での様子がウソみたいな翔くんの様子に安堵する。
「礼音、翔くんだよ?」
病室のドアを開けた途端、礼音の弾けるような笑顔が目に飛び込んできた。