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マリア

第20章 奸計曲



雅「袋、開けよっか?」


おにぎりの袋に手をかけるもそっぽを向く。



雅「食事制限まではしてないから。」



俺と目も合わせようとしない。



そりゃ、そうだろ?



薬盛って、拘束するぐらいだもん。



俺の横で、ガサガサとおにぎりの封を開ける音がして、おにぎりが目の前に差し出された。



「………」



おにぎりと、そいつの顔を無言で見比べる。



雅「食べて?カズ。」



どんな顔して食え、って言ってんのか。



「これ外して?」



左手の拘束具を掲げてみせる。



雅「食べさせてあげるから…」



俺は雅紀の手の中のおにぎりを、自由の利く右手で叩き落とした。



「外せ、って言ってんだろ!!」



雅紀は無言でおにぎりを拾い上げ、コンビニの袋に戻す。



「俺をどうするつもりだよ!?」


雅「…どうもしない。」


「え?」


雅「ずっとこのまま俺の側に置いておく。」



ゆっくりとこちらに向けられた雅紀の顔。



雅「だってカズは俺の恋人だもん。」


「ま…さき?」



背中を、氷の欠片が物凄い勢いで滑り落ちてゆく。



そんな、錯覚に囚われた。



雅「恋人の側にはちゃんといてあげないとね?」



再び、コンビニの袋に手を入れると、



さっきのおにぎりを掴み、俺の目の前に差し出した。



雅「さ、カズ、お腹すいただろ?」



そう言って笑う雅紀の顔に俺の足は、



地中にめり込んでしまったかのように、










動かせなかった。




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