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マリア

第20章 奸計曲



「わ…悪いけど、今、そんなお腹すいてな…」



突然、アゴを捕まれ、



雅紀の方へ顔を向かされる。



雅「俺、ガリガリのカズなんて抱きたくないんだよね?」



と、アゴを持つ手で口を無理矢理開かせると、力一杯握りしめていたせいでボロボロになったおにぎりを


わずかに開いた口の中に捩じ込んできた。



雅「だから、ちゃんと食べててくれないと困るの。」


「ぐっ……うっ……げ、げほっ!」



が、噎せて吐き出す。



雅「もー、カズ、ダメじゃん!?ちゃんと食べなきゃ?」



俺が吐き出したご飯粒を丁寧に拾い集める雅紀。



雅「んじゃ、お茶なら飲める?」



今度はペットボトルの蓋を開け、俺の口に宛がった。



雅紀は、口の中に収まりきらない量のお茶が口の端からだらだら流れているのに、



雅紀はずっと、ペットボトルを俺の口に宛がっていた。



い、息が…!



俺は頭を思いっきり振り、



もう片方の手でペットボトルを弾き飛ばした。



無表情に、かつ無言のままその行方を目で追っていた雅紀は、



ゆっくり立ち上がってまた、ペットボトルを拾った。





雅「もー!カズってホントワガママなんだからぁ。」



と、その口調からは、半ば、この状況を楽しんでいるかのような気さえした。


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