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裏小屋

第4章 テントの中で

 さらに桝本が「それと、パンがそこにあると思うんやわ。それも頼むわ」と声をかける。

 そして、四人が勝山を待っていると、隣のテントから「わっ!」と声がした。

 すると、血相を変え、四人のテントに戻ると、パンとラジオを突きだし「おい、誰や!」と怒鳴りだした。

 四人は驚いて、勝山を見る。

「急にどうしてん」と馳谷が、困惑しながら聞いた。

「さっき、向こうで俺を押し倒したやろ!」

 すると、桝本。

「そんな、男を押し倒すようなやつって、石柿しかおらんやろ!」

「ちょっと待て!」と石柿が返す。

 勝山の様子は変わらない。やはり、酒が入ると無理か。

「まあ、いいから座ろう」と高橋が、なだめるように促す。

 聞けば、勝山は向こうのテントで、誰かに背中を押されて倒されたと言う。

 だが、勝山以外、誰一人、ここから出た者はいない。

「じゃ、誰が押したっつぅんだ?」

 勝山はまだ落ち着かない。

 だが、なにを言っても、勝山は聞き耳をもたず、一人、向こうのテントに入っていった。

「おい、かっちゃん」

 桝本が止めるが、勝山は戻ってこない。だが、パンはしっかり持っていっていた。

 誰が勝山の背中を押したのか?

 実は、この真相。酔った勝山の足がもつれて、前のめりにこけただけだ。

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